「この雨が俺の全ての汚れを落としてくれないか。」
そう言って常連のおじ様が入ってくる。
今日はまとまった雨が降っている。
お、マスター、こんな雨じゃお前の汚れは落としきれないよって顔してるな、とおじ様は1人笑い出てきた水に口をつけた。
いつもの朝。
新じゃがをストーブで焼き上げ、試しに1つ食べ美味しいなぁと感動していた僕はとても機嫌が良い。
そうですねぇ、三途の川で水浴びしてもこの汚れは落ちるかどうかぁ…
などと言うことなくただ微笑んで暖かくおじ様を見守る。
エスプレッソの調整も比較的スムーズに進み、おじ様にアメリカーノを差し出す。
もうじきこの寒さも終わるなぁ。あと数日で暖かくなる。
おじ様は窓の外を眺めながら呟く。
相変わらずの雨。
めずらしくお客様が立て続けに入ってくる。
僕はバタバタと動き出す。
おじ様はカウンターに置いてある本を手に取った。